パーミッションの仕様変更(API≧30)~(3)アプリの休止~

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パーミッションシステムの仕様変更がAPI≧30で行われています。

 (1)1回だけアクセス許可
 (2)“今後表示しない”の非表示
 (3)アプリの休止

ここでは、「(3)アプリの休止」について説明します。

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休止とは

数ヶ月にわたってアプリが操作されなかった時に、アプリが持つ必要最小限のリソースを残して、その他をクリアすることです。

休止対象のアプリへ、次の処理を行います。

・Runtime Permissionの取得をリセット(削除)
・一時データ(キャッシュ)を消去 ※API≧31のみ

休止が行われると、ユーザに通知が届きます。

Api30Api31
アプリの休止の通知(Api30,Android11)
アプリの休止の通知(Api31,Android12)

上記の処理に加えて、アプリのアンインストールへユーザを導くようになっていますが、アンインストールするかどうかはユーザ次第です。

アプリの休止についての詳細は「App hibernation」を参照してください。

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休止の条件

「アプリが操作されていない」と判断する具体的な条件は、次のようなものです。

・Activityがフォアグラウンドにない(表示されていない)
・Activity以外のコンポーネントが呼び出されていない ※API≧31のみ

 【コンポーネントの例】
  他アプリによりバインドされたサービス
  他アプリにより呼び出された明示的なブロードキャストレシーバー
  他アプリにより照会されたコンテンツプロバイダー

・ウィジェットを操作していない ※API≧31のみ
・Notificationを操作していない(閉じることを除く)※API≧31のみ

これらの条件を数ヶ月にわたって満たしていれば、アプリは休止になります。

アプリの休止の条件

「数ヶ月にわたって」がどういう状態かと言えば...

システムの内部では、「check_frequency間隔で判定を行ったとき、休止の条件を満たしてからunused_threshold以上経過した」状態です。

逆に条件から外れた動きがあると、システムはそのイベントをユーザの操作と見なして、休止を解除します。

実際は図中で示したように、APIのプログラムへデフォルト値が埋め込まれているので、約90~105日経過したら休止です。

デフォルト値はAndroidのブート時のログ出力(例はエミュレータのログ出力)で確認できます。

API30API31
※パッケージ名:com.android.permissioncontroller
          :
... I/AutoRevokePermissions: Parsed teamfood setting value: null
... I/AutoRevokePermissions: Parsed teamfood setting value: null
... I/AutoRevokePermissions: scheduleAutoRevokePermissions with frequency 1296000000ms and threshold 7776000000ms
... I/AutoRevokePermissions: user 0 is a profile owner. Running Auto Revoke.
... I/AutoRevokePermissions: Parsed teamfood setting value: null
... I/AutoRevokePermissions: onStartJob
... I/AutoRevokePermissions: Skipping auto revoke first run when scheduled by system
          :
※パッケージ名:com.google.android.permissioncontroller
          :
... I/HibernationPolicy: scheduleHibernationJob with frequency 1296000000ms and threshold 7776000000ms
... I/HibernationPolicy: user 0 is a profileowner. Running hibernation job.
... I/HibernationPolicy: No existing job, scheduling a new one
... I/HibernationPolicy: onStartJob
... I/HibernationPolicy: Skipping auto revoke first run when scheduled by system
          :
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休止の影響範囲

「アプリの休止」は、端末で稼働しているAndroidのバージョンと、アプリがビルドされた時のtargetSDKの関係により、その動作に違いがあります。

端末のOStargetSDK休止の影響管理ページ
≧Android12
(API31)
≧31Permissionの取得をリセット
一時データ(キャッシュ)のクリア
「アプリ情報」
Android11
(API30)
 30Permissionの取得をリセット
Android6~10
(API23~29)
「Playプロテクト」
※休止の仕様をAPI<30へバックポート(移植)、Google Play Service+Play Storeで実現
API23~29における「アプリの休止」
「アプリの休止」はAPI≧30で追加された機能です。しかし、API23~29に対してもバックポート(移植)が行われています。

この場合、APIに実装されているのではなく、Google Play ServiceとPlay Storeアプリの連携により実現されている点に注意してください。

対応は2021.12以降に順次行われているので、「アプリの休止」を端末に反映させたければ、この両者を最新版へアップデートする必要があります。

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休止の判定解除

「アプリの休止」はデフォルトでOn(有効)になっています。

しかし、管理ページからユーザの手によってOff(無効)に切り替えが可能です。

API23~29(参考)API30API31
アプリの休止の判定解除
アプリの休止の判定解除
アプリの休止の判定解除

Permissionの状態変化

休止の発動後に、granted=trueからfalseに変化します。

> adb shell dumpsys package パッケージ名

【バックグラウンドへ遷移(直後)】
runtime permissions:
android.permission.ACCESS_FINE_LOCATION: granted=true, 
  flags=[ USER_SET|USER_SENSITIVE_WHEN_GRANTED|..._DENIED]
android.permission.ACCESS_COARSE_LOCATION: granted=true, 
  flags=[ USER_SET|USER_SENSITIVE_WHEN_GRANTED|..._DENIED]

【アプリの休止後】
runtime permissions:
android.permission.ACCESS_FINE_LOCATION: granted=false, 
  flags=[ REVOKED_COMPAT|USER_SENSITIVE_WHEN_GRANTED|..._DENIED|AUTO_REVOKED]
android.permission.ACCESS_COARSE_LOCATION: granted=false, 
  flags=[ REVOKED_COMPAT|USER_SENSITIVE_WHEN_GRANTED|..._DENIED|AUTO_REVOKED]

※...:左のフラグと同じ接頭辞ため省略
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休止からの復帰動作

アプリの休止後、

復帰はonStartからスタートします。また、onSave/onRestoreInstanceStateが有効になっています。

ケース
他のアプリ起動(Bgへ)
履歴から復帰(Fgへ、通常)
履歴から復帰(Fgへ、休止後)
※Fg:フォアグラウンド、Bg:バックグラウンド
※API≧28の場合、onStop ⇒ onSaveInstanceStateの順番
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