ライブラリ提供クラスのカスタムSerializer（Surrogate版）

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Kotlin serializationでJSONをパース（JSONの記述⇔クラスのオブジェクト）する場合に、一般クラスは未対応です。

例えば、データクラス（コンストラクタの引数でプロパティを指定するクラス）以外の、ユーザ定義のクラスはパース出来ません。また、ライブラリ提供のクラスもパース出来ません。

対応させるためには、そのクラスのカスタムSerializerを作成します。

そして、相互変換する方法をプログラマー側で定義します。

カスタムSerializer（ライブラリ提供クラス、Surrogate版）の作成方法をまとめます。

※環境：Android Studio Meerkat | 2024.3.1
　　　　Kotlin 2.0.0
　　　　Kotlin serialization json 1.7.1

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標準で対応する型、しない型

Kotlin serializationでJSONをパース（JSONの記述⇔クラスのオブジェクト）する場合に、標準で対応する型は次の通りです。

  • ・Int,Long,Float,Double,Booleanなど（プリミティブ型）
  • ・String（文字列）※プリミティブ型へ含める場合もある
  • ・Array（配列）
  • ・List,Map,Set（コレクション型）
  • ・Enum（列挙型）
  • ・データクラス

上記以外の一般クラス（ユーザ定義のクラス、ライブラリ提供のクラス）は未対応です。

例えば、次のようなクラスは標準でパース出来ません。

public final class LocalTime
    ...
    private final byte hour;
    private final byte minute;
    private final byte second;
    private final int nano;
	...
	@Override
    public String toString() {
        StringBuilder buf = new StringBuilder(18);
        int hourValue = hour;
        int minuteValue = minute;
        int secondValue = second;
        int nanoValue = nano;
        buf.append(hourValue < 10 ? "0" : "").append(hourValue)
            .append(minuteValue < 10 ? ":0" : ":").append(minuteValue);
        if (secondValue > 0 || nanoValue > 0) {
            buf.append(secondValue < 10 ? ":0" : ":").append(secondValue);
            if (nanoValue > 0) {
                buf.append('.');
                if (nanoValue % 1000_000 == 0) {
                    buf.append(Integer.toString((nanoValue / 1000_000) + 1000).substring(1));
                } else if (nanoValue % 1000 == 0) {
                    buf.append(Integer.toString((nanoValue / 1000) + 1000_000).substring(1));
                } else {
                    buf.append(Integer.toString((nanoValue) + 1000_000_000).substring(1));
                }
            }
        }
        return buf.toString();
    }
	...
}

ライブラリ提供クラスをパースするには、そのクラスのカスタムSerializerが必要です。
※LocalTimeについては「現在の日付と時刻を取得」を参照

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Serializerの種類

Serializerは、表のような種類（書き方）があります。

特徴シリアル化の構成
PrimitivePrimitive型（Stringを含む）限定PrimitiveSerialDescriptor
Delegating定義済みのSerializerへ委任するSerialDescriptor
Surrogate代理クラスを立て（作成し）、
そのクラスのSerializerに代行させる		SerialDescriptor
Handwritten全ての要素のシリアル化を細かく定義buildClassSerialDescriptor

この記事で取り上げるのは、Surrogate版です。
※種類は「Custom serializers」に紹介されています。

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カスタムSerializerの作成

Serializer（KSerializerインターフェース）は「Kotlin serializerがJSONをパースする際に呼び出される関数」を持ちます。

object XXXSerializer : KSerializer<XXX> {
    override val descriptor: SerialDescriptor
        get() = TODO("識別子を実装")

    override fun serialize(encoder: Encoder, value: XXX) {
        // Json.encodeToString( )で呼び出される
        // Obj->JSONの変換を実装
    }

    override fun deserialize(decoder: Decoder): XXX {
        // Json.decodeFromString( )で呼び出される
        // JSON->Objの変換を実装
        return XXX()
    }
}
 KSerializer#serialize( ) 

「クラスのオブジェクト⇒JSONの記述」で呼び出し

 KSerializer#deserialize( ) 

「JSONの記述⇒クラスのオブジェクト」で呼び出し

ですので、カスタムSerializerは、このKSerializerインターフェースを継承して、相互変換の方法をserialiseとdesirializeへ実装します。

@Serializable
private data class Surrogate(val hh: Int, val mm: Int, val ss: Int)

object LocalTimeSurrogateSerializer : KSerializer<LocalTime> {
    override val descriptor: SerialDescriptor =
        SerialDescriptor(
            "com.example.LocalTimeSurrogateSerializer", // Serializer名（一意に識別）
            Surrogate.serializer().descriptor           // シリアル化の構成
        )

    // Obj->JSONの変換
    override fun serialize(encoder: Encoder, value: LocalTime) {
        val _surrogate = Surrogate(value.hour, value.minute, value.second)
        encoder.encodeSerializableValue(
            Surrogate.serializer(),
            _surrogate
        )
    }

    // JSON->Objの変換
    override fun deserialize(decoder: Decoder): LocalTime {
        val _surrogate = decoder.decodeSerializableValue(
            Surrogate.serializer()
        )
        val _hh = _surrogate.hh
        val _mm = _surrogate.mm
        val _ss = _surrogate.ss
        return LocalTime.of(_hh, _mm, _ss)
    }
}

代理クラス

代理クラス（@Serializable付き）を作成し、Serializerを自動生成します。

@Serializable
private data class Surrogate(val hh: Int, val mm: Int, val ss: Int)

そして、そのSerializerへ相互変換の処理を代行させます。

相互変換の代行

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SerialDescriptor（シリアル化の構成）

SerialDescriptorでシリアル化の構成を定義しています。つまり、「JSONでどのように表現するか！」です。

ここでは、対象クラスを代理クラスのシリアル化の構成で表現します。

定義にSerialDescriptor( )を使います。

    override val descriptor: SerialDescriptor =
        SerialDescriptor(
            "com.example.LocalTimeSurrogateSerializer", // Serializer名（一意に識別）
            Surrogate.serializer().descriptor           // シリアル化の構成
        )

deserialize（JSON⇒Objの変換方法）

Decoder#decodeSerializableValue( )を使って、代理クラスのSerializerに代行を依頼すると、代理クラスのオブジェクトが返されます。

後は、代理クラス⇒対象クラスの変換を行います。

    override fun deserialize(decoder: Decoder): LocalTime {
        val _surrogate = decoder.decodeSerializableValue(
            Surrogate.serializer()
        )
        val _hh = _surrogate.hh
        val _mm = _surrogate.mm
        val _ss = _surrogate.ss
        return LocalTime.of(_hh, _mm, _ss)
    }

serialize（Obj⇒JSONの変換方法）

対象クラス⇒代理クラスの変換を行います。

後は、Encode#encodeSerializableValue( )を使って、代理クラスのSerializerに代行を依頼します。

    override fun serialize(encoder: Encoder, value: LocalTime) {
        val _surrogate = Surrogate(value.hour, value.minute, value.second)
        encoder.encodeSerializableValue(
            Surrogate.serializer(),
            _surrogate
        )
    }
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カスタムSerializerの使用

カスタムSerializerはアノテーション@Serializableの引数で登録します。

Android Studioはビルドをする際に、@Serializable付きのクラスを認識して、対象クラスのJavaバイナリへ、引数のカスタムSerializerクラスを埋め込みます。

@Serializable
data class Person(
    val id: Int,
    val name: String,
    @SerialName("position") val post: String,  // JSONのキーに別名を定義
    @Serializable(LocalTimeSurrogateSerializer::class)
    val times: LocalTime
)

JSON⇒Obj変換

Json#decodeFromStringを呼び出します。

内部で対象クラスのdeserialize( )が呼び出されます。

    val _jPerson = """
            {
                "id":1,
                "name":"Android",
                "position":"Manager",
                "times":{"hh":8,"mm":55,"ss":22}
            }
            """.replace("\\s+".toRegex(), "") // 空白の削除
    val _oPerson = Json.decodeFromString<Person>(_jPerson)

    Log.i(TAG, "(Serialization) Person Obj  = ${_oPerson}")

(Serialization) Person Obj  = Person(id=1, name=Android, post=Manager, times=08:55:22)

Obj⇒JSON変換

Json#encodeToStringを呼び出します。

内部で対象クラスのserialize( )が呼び出されます。

    val _oPerson = Person(
        id = 2, name = "Droid", post = "Staff",
        times = LocalTime.of(12, 2, 0)
    )
    val _jPerson = Json.encodeToString(_oPerson)

    Log.i(TAG, "(Serialization) Person Json = ${_jPerson}")

(Serialization) Person Json = {"id":2,"name":"Droid","position":"Staff","times":{"hh":12,"mm":2,"ss":0}}
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