クロージャ(Closure)は新しい概念ではなく、関数型プログラミングに古くから存在していました。
手続き型やオブジェクト指向プログラミングにも、だいぶ前から採用が進んでいます。
Kotlinもクロージャが使える言語の1つです。
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関数のローカル変数のスコープ
関数のローカル変数のスコープ(有効な範囲)は、その関数内です。
従って、関数Aから関数Bのローカル変数は参照できません。
しかし、関数内に子関数を定義すると、関数Dから関数Cのローカル変数が参照できます。
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クロージャとは
以下はクロージャの例です。記述のポイントは2つです。
(1)子関数から親関数のローカル変数を参照
(2)親関数が子関数オブジェクトを戻り値で返す
fun increment(): ()->Int { var value = 0 fun plus1(): Int { return value++ // 親関数のローカル変数を参照 } return ::plus1 // 子関数オブジェクトを戻り値で返す }
関数のローカル変数の寿命はその関数内です。関数の処理が終われば破棄されます。
しかし、「クロージャ―の例」のような構成になっていると、親関数のローカル変数は破棄できません。子関数から参照される可能性があるためです。
この時、親関数の戻り値で返される子関数オブジェクトは、参照する変数(「実行環境」と表現される)を含んだものになります。
このように「関数+参照する変数(実行環境)」が格納された関数オブジェクトをクロージャといいます。
「クロージャの例」の記述中で、子関数が使用されるのは一度だけです。一度だけしか使われない関数へ名前を付ける事は無駄です。
よって、子関数はラムダ式(無名関数)を用いるのが通例です。
fun increment(): ()->Int { var value = 0 return { value++ } // 子関数オブジェクトを返す(ラムダ式) }
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クロージャの独立性
作成されたクロージャは各々独立した動作をします。お互いに干渉しません。
また、作成時の環境(参照する変数)を格納したものになります。作成時の環境をキャプチャーしたような動作です。
fun increment(start: Int = 0): ()->Int { var value = start return { value++ } } fun exec() { // // クロージャはお互いに独立、干渉しない // val _inc1 = increment() val _inc2 = increment() println("Inc1 = ${_inc1()}") // => 0 println("Inc2 = ${_inc2()}") // => 0 println("Inc1 = ${_inc1()}") // => 1 println("Inc2 = ${_inc2()}") // => 1 println("Inc1 = ${_inc1()}") // => 2 println("Inc2 = ${_inc2()}") // => 2 // // クロージャは作成時の環境を格納する // val _inc3 = increment(10) // 初期値10でクロージャ作成 println("Inc3 = ${_inc3()}") // => 10 println("Inc3 = ${_inc3()}") // => 11 println("Inc3 = ${_inc3()}") // => 12 }
Inc1 = 0 Inc2 = 0 Inc1 = 1 Inc2 = 1 Inc1 = 2 Inc2 = 2 Inc3 = 10 Inc3 = 11 Inc3 = 12
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