ComposeとKotlinコンパイラーの互換性とビルドエラー

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プロジェクトのビルドで「Something went wrong while checking for version compatibility between the Compose Compiler and the Kotlin Compiler.」とメッセージを吐き、エラーになる場合があります。

既存のプロジェクトを新しくリリースされたAndroid Studioでビルドした場合に頻発します。

先日、「Giraffe|2022.3.1」がリリース(2023.07)されて、早速、ビルドをしたら発生しました。

その対処方法を説明します。

※環境:Android Studio Giraffe | 2022.3.1

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コンパイラーの互換性

Jetpack Composeにおいて、@Composable(アノテーション)の付く関数をコンポーザブル関数と呼び、コンパイラーによって特別なバイトコードへ変換されます。

このとき使われるコンパイラーが「Composeコンパイラー」です。

@Composable
fun Greeting(name: String, modifier: Modifier = Modifier) {
    Text(
        text = "Hello $name!",
        modifier = modifier
    )
}

Composeコンパイラーは特定のバージョンの「Kotlinコンパイラー」を拡張して作られます。

ですので、特定のバージョンにおいて、両者は互換性を持ちます。どちらのコンパイラーを使っても、Kotlinコードが同様にコンパイル可能です。

この関係が「ComposeとKotlinの互換性マップ」に書かれています。

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ビルドエラーの発生

新しくリリースされたAndroid Studioでビルドした場合などに、コンパイラーのバージョンに関連したビルドエラーが発生することがあります。

以下のようなメッセージを出力するエラーです。

Something went wrong while checking for version compatibility between the Compose Compiler and the Kotlin Compiler.
----------
Compose コンパイラーと Kotlin コンパイラーの間のバージョンの互換性をチェック中に問題が発生しました。

つまり、「互換性のないバージョンのコンパイラーがAndroid Studio内に指定されている」と言っています。

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ビルドエラーの原因

原因は、新しくリリースされたAndroid Studioでモジュールを新規作成すると、互換性のないバージョンのComposeコンパイラーが指定されるためです。

エラーの起きる理由

新規作成したモジュール(Module C)をビルドするとエラーになります。

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ビルドエラーの対処

「互換性マップ」に従い、互換性のあるバージョンに変更します。

以下は、Kotlinコンパイラーのバージョンを変更した例です。逆に、Composeコンパイラーのバージョンを変更する場合もあります。

buildscript {
    val agp_version by extra("8.0.2")
}
// Top-level build file where you can add configuration options common to all sub-projects/modules.
plugins {
    id("com.android.application") version "8.0.2" apply false
//  id("org.jetbrains.kotlin.android") version "1.7.20" apply false
    id("org.jetbrains.kotlin.android") version "1.8.10" apply false
}
plugins {
    id("com.android.application")
    id("org.jetbrains.kotlin.android")
}

android {
    ...
    composeOptions {
        kotlinCompilerExtensionVersion = "1.4.3"
    }
    ...
}

dependencies {
    ....
}

互換性マップのサンプル

ただし、コンパイラーのバージョンの変更に伴って、ライブラリーのバージョンを変更する必要があるかも知れません。必要に応じて依存リスト(dependencies { })を修正してください。

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